海外CAD事情:upFront.eZine - Issue #351(日本語版)

August 26 2003  日本語版サイト  http://www.rrcorp.co.jp/

英語版サイト    http://www.upfrontezine.com/

今週号の内容:

* IMSI社がCADKEY社買収を提示
- IMSICADKEY買収の資金余裕はあるのか?
- CADKEYIMSIの接点

* Autodeskの第2四半期経営報告

*プレスリリースのサマリー、及び他のレギュラー項目

IMSI社がCADKEY社買収を提示

月曜日の衝撃的なプレスリリースの中で、IMSI社はCADKEY社を僅か250万ドルで買収する計画があることを発表した。プレスリリースの後半で、CADKEY社が先週金曜日(822日)に自社を破産保護処置の下に置いたことも明らかにした。

CADKEY社に対するHLB社からの訴訟清算の際に、あり得べき法的/財務的責任を未然に防ぐ必要性があったのかもしれない。”、とCADKEY CAD Chatフォーラムの運営管理者であるBrian Vierstra <http://www.cadchat.com/forums/index.php?act=SC&c=83> は推測している。

HLB Technlogies社は、リバースエンジニアリングを禁じたシュリンクラップ・ライセンスにCADKEY (旧名Baystate Technologies)が違反したことから生じた損害賠償金500万ドル(380万ドル+金利)の勝訴判決を得ている。この12年に及んだ法的争いは、米国最高裁がCADKEY社からの下級審判決の見直し請求を今年の6月に却下した時点で終了したという事情がある。

上記の事情が意味することは、CADKEY社はHLB社に500万ドルの負債があるということである。自社を破産状態に置くことによって、CADKEY社はHLB社に対して防御措置を取ったことになる。

IMSICADKEY買収の資金余裕はあるのか?

IMSI社自身が過去数年に渡って財務問題に喘いでいるのに、どうやって買収資金を出せるのだろうか? IMSI2ヶ月前に同社のArtToday.com Webサイト売却により1,300万ドルを調達した。(ArtTodayではクリップアート、Webグラフィックス、写真、及びフォントなどをダウンロードする会員権を販売している。)CEOMartin Wadeはその時点で次のように言明していた。この資金は営業、ダイレクトマーケティング、及び商品開発の担当者の追加雇用にのみ使用する計画である。

IMSI107日までにCADKEY社買収の結論を得られればと“期待”している。破産法によりCADKEY社は買収に関心を持つ他の企業からの入札も受け入れることが要求される。興味ある企業はRobert Schwartz 電話番号 01 (518) 786-7733に連絡を取ればよい。

CADKEY社は非公開企業であるため、250万ドルが正当な市場価値であるのか否かを知るために必要な同社の財務状況については知る術がない。私の感覚ではこの買収金額は低すぎるものであり、例え悪戯心であるにせよ他の企業からの入札参加を容易に許すことになると思う。

プレスリリースでの数字を基にしてCADKEYの年間売り上げを推定することはできる。

20027 275,000 シート出荷済み
20048 295,000シート出荷済み

概略、年間10,000シートの新規販売実績であり、1,500ドル/シートとして年間1,500万ドルの売上げと推定される。買収金額は最低でも年間売上金額のレベルが普通である。やっぱりIMSIの入札価格は低すぎる。

CADKEYIMSIの接点

両社の接点は今年初めの製品相互提供の提携に始まった。CADKEYのオンラインストアではTurboCAD Profesionalを割引なしの695ドルで販売し、IMSIは同社のTurboCADユーザにCadkey Design Suite7月末までの限定で2,200ドル値引きの995ドルで販売するものであった。

その時点で、私は両社がアライアンスを組む理由を尋ねたことがあった。IMSIからの視点での理由は私にも納得できた。TurboCADユーザの多くが、高度なNURBSファンクション、パラメトリックデザイン、及び2D3Dワイヤフレーム、サーフェス、締結部品類や歯車、バネのソリッドモデルなど、より高価な機械系CADにしか普通はない機能を欲しがっていたからである。TurboCADの将来バージョンを待つよりも、顧客にソリューションを今の時点で提供したかったというのがIMSIの言であった。

CADKEYの視点からの理由は今ひとつピンとこないものであった。“…. CADKEYVARチャネルを介してCADKEYユーザはTurboCADを安い価格で追加できる。” 何故に互換性のないCADパッケージに700ドル使う必要があるだろうか?

CADKEY買収の方が1ヶ月前のUpperspace CorporationからのDesignCADInstantシリーズソフトウェアの買収よりもIMSIにとってはましである。(この買収金額は公表されていない。)

Autodeskの第2四半期経営報告

Autodeskは先週、第2四半期(3ヶ月間)の全世界での売上げが前四半期の21,100万ドルより増えて21,200万ドルであったと発表した。1,970万ドルの一過性の税特典を除外して、利益は1,290万ドルであった。欧州での販売は前四半期比16%増であったが、北米とアジア地域での売上げは減少した。CEOCarol Bartzによれば、欧州のいくつかの国での販売増はAutoCAD LTの貢献に拠るものであった。

Autodeskの株価はこの発表で過去18ヶ月最高の17.20ドルに上昇した。第2四半期終了時点でのAutodeskの銀行預金と有価証券の残高は41,200万ドルとなった。

AutoCAD 2004ベースの製品からのアップグレード収入は2,900万ドルに増加したが、一方サブスクリプション収入は2,700万ドルであった。Autodeskの言によれば、以前の最も人気の高かったRelease 14アップグレード(おそらく今年1月でサポートが中止されたのが貢献したのだろう)のときに比べても、2004へのアップグレード率は3%それよりも高い数字である。インストールするか否かに関わらずアップグレードを受け取るサブスクライバーの存在も増加理由の一つである。ここ迄は良いニュースである。

悪いニュースは、AutoCAD 2004ベース製品の新規販売が前四半期よりも31%減の3,400ユニットに留まったことである。それでも2004は人気があるに違いない。出版社からの連絡によれば、私が執筆した“Illustrated AutoCAD 2004 Quick Reference”はAutoCAD 20002002用の版よりも売れているとのこと。

財務アナリストとのQ&Aのときに、AutoCAD LTの価格を過去12ヶ月で3回値上げしたが、さらにアジア地域ではもう一度値上げをする計画であるとAutodeskは言明した。[ニュージーランドを訪れたときに私が話をしたユーザの中には、LT価格のニュージーランドでの高さに怒り狂っていた。] ユーザをアップグレードからサブスクリプション方式に誘導するために、サブスクリプション価格はアップグレード価格よりも安い価格のままにまだ据え置かれる。年末までにサブスクリプション会員数を400,000名にしたいという希望を同社は抱いている。

Inventor Proは最初の6週間で100万ドル売上げを達成したという報告があった。私の計算でいけば、123コピーが出たということになる。Autodeskは2種類のInventor製品を販売しているという顧客からの非難に応えてであろうが、コアの機械設計ソフトウェア上での多種に渡るアドオンを販売している他社の提供製品の種類の多さに比べれば、2種の製品は少ない数であると強調していた。Inventor ProAutodeskの“最初のPLM製品”として説明されている。PLM(product lifecycle management)分野には今後も投資を継続するとAutodesk社は言明している。

なお、同社は経営数値の報告フォーマットを“pro forma”方式からGAAP[generally accepted accounting principles]方式に変更した。Pro Forma会計方式は裁量度合いが高いので、数値を決める根拠が薄弱でGAAP方式よりも常に数値が良く見える。GAAP方式では何を収入や費用として取り扱うかのルールが決っているが、私の会計士によれば、それでもまだ企業の裁量余地はある。Autodesk社はPro Forma方式とGAAP方式の比較を行った5年分の決算書類を現在提供している。

ディーラーを気分よくさせるニュース:ある時期Autodeskはダイレクト販売比率の目標を40%に設定していたが、今では目標数値は20-30%に下げられた。

プレスリリースのサマリー

見落としていた人のためにCAD関連プレスリリースのサマリーを掲載しておきたい。

Purdue Universityで博士号取得を目指しているPollphat Nitithamyongは、“建設業界におけるWebベース・プロジェクト管理システム運営の成功/失敗の鍵となるファクターの解析”というテーマの研究を行っている。ASP(application service providers)からレンタルまたはリースされたシステムに研究の焦点を当てている。直近の建設プロジェクトに関係したデータを得るために、そのプロジェクトに参加したプロジェクトメンバーに対するオンラインでの質問票が準備されている。http://rebar.ecn.purdue.edu/WPMS_survey

PTCは、“Amazon.comで取り扱われているCAD関連107品目に関して言えば、他のCADに比べてPro/ENGINEER関連のテキストやチュートリアルCD3倍も多い。”、と自慢している。ふーむ….新手のrunaway marketingか。“AutoCAD”に関連した書籍は1,146品目あることを私は知っている。‘Pro Digital Digest’の調査に回答した998名の読者の中で、17%の読者がPro/Engineer Wildfireに既にアップグレード済みと答えた。PTCが出している無料のCADパッケージPro/DESKTOP Expressは現在version 8.0で、次のサイトからダウンロードできる。http://www.ptc.com/products/desktop/express/license.htm

Bentley SystemMicroStation TriFormaは、IAIInternational Alliance for Interoperability)からIFCIndustry Foundation Classes2xの最終認証を得た。

CADopiaIntelliCAD 4の出荷を始めた。いくつかの改善点の中には“Customizing CADopia IntelliCAD 4”という電子ブックも含まれている。http://www.cadopia.com/.

コンピュータ関連ニュースのサマリー

DV Backup (US$25)は、Macコンピュータから10-15GBのデータをビデオカメラのDVデジタルビデオのテープにバックアップする。http://www.coolatoola.com/

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