June 17、 2003 日本語版サイト http://www.rrcorp.co.jp/
英語版サイト http://www.upfrontezine.com/
今週号の内容:
*投稿論説:コラボレーションに将来はあるか?
*インタビュー:DWFに関するAutodeskの計画
*プレスリリースのサマリー、及び他のレギュラー項目
コラボレーションに将来はあるか?
投稿論説:Martyn Day
CAD業界は‘コラボレ−ション’や‘コラボレーティブ・エンジニアリング’という呪文を、あたかも我々すべてが越えねばならぬ意識の高みか何かのように唱えてきた。ソフトウェアベンダーのプレスリリースで頻繁に使われている‘コラボレ−ション’という言葉は、エンジニア同士に連携作業を行わせる特別な新技術であるかのような感じを抱かせている。(コラボレーションではなく‘コンカレント’という言い方をすべきであろう。)
おそらく私は単純に過ぎるかもしれないが、エンジニア同士は連携作業を行うのが困難だと思ったことはない。エンジニアと建築家は、はるか昔から協業的に仕事を行ってきた。例えば、エジプトのピラミッド、中国の万里の長城、ストーンヘンジ、ローマの街道や水路、等々、すべてIBMのパソコンが世に出る前に行われたコラボレーティブ・エンジニアリングの歴史的事例である。実際、エンジニアが非協業的に仕事をするなどこれまでに聞いたことがない。今さら、ソフトウェア会社は何をしつこく言っているのだろう?
コラボレーションを言い出した最初の会社はCoCreate <http://www.cocreate.com/>で、OneSpace製品に関してであった。複数のエンジニアが同一部品をリアルタイムに見て、ネットワークやインターネットを介して同時編集が出来るというものである。初めて登場したときは、これはスゴイという評判のものであったが、マーケットでの成功を収めることはなかった。同一部品に対して同時に作業をすることは、既存のプロセスやワークフローには適合しなかったからだと私は思う。大きなアセンブリのサブセットである個々の部品に対してエンジニアは作業を行う。常に変わりつつある部品に対して協同作業をどうやって出来ると言うのだろうか? 姿は見えない日本の誰かが、その部品を修正中であるかもしれないのだから。
このテクノロジーは開発が可能であるが故に開発されたもので、ユーザから頼まれて開発された訳ではない。インターネットという雪だるまが転がり始めた時点で、どのベンダーもコラボレーションというバンドワゴンに飛び乗った。インターネットが誰もを接続してくれるが故に、人々は今ではエレクトロニクス的にコラボレーションが出来るようになった。ネットミーティング、コンテンツのダウンロード、及び電子メールなどはコラボレーティブ・エンジニアリングの要素を成すものであった。CADベンダーはプロジェクトコラボレーションの助けともなるプロジェクトホスティングのWebサイトやポータルに多額の金を費やした。ユーザのコラボレーション関連ニーズに応えるために、彼らは自分達の主要アプリケーション用のWebベースツールを開発した。不運にも、それらのWeb製品も開発可能であったが故に開発されたのであって、顧客の関心を引き付けることには失敗したのである。
ドキュメント管理の会社や、最近ではPLM(product lifecycle management)の供給者も、ユーザがエンジニアリング文書を検索・共有するという意味での‘コラボレーティブ環境’について語っている。このような製品では、コラボレーティブに作業をする上でCADを使うことはなく、コラボレーティブ作業に参加するために電子メールリストのメンバーになることが必要なだけである。
コラボレーションの主たる定義は次のようになる。
*
個々の部品に対してコンカレントに作業を行う。
*
大規模モデルに属する複数部品に対する作業を行う。
*
管理されたグループ内でモデルや部品に対して作業を行う。
*
プロジェクト文書を理解するためだけにしても、エンジニアリングプロセスのどこかの時点で関与する。
上記の定義が意味することは? おそらく、エンジニアリングデザインの成果は人々が行う協同作業の結果であり、これまでも常にそうであったということであろう。 ‘コラボレーション’という言葉に値する特定のCADテクノロジーは未だ一つも存在していない。
コラボレーションは、業界の人々の言葉の中に単に‘員数揃え’のために入っていると私には感じられる。この言葉は業界によって付け加えられた多くの形容詞に悲しい程に苛まれてきた。行き過ぎた乱用や不完全な使用を受けて意味があまりに薄められ、過度に酷使されて結局はボロボロに擦り切れてしまい、今では全く何も意味しないものとなっている。私の指は腕とコラボレートし、次に脳とコラボレートしてこの文章を書いている。私の両親は互いにコラボレートして私を生み出した。私は出版社とコラボレートして稿料を上げることを期待している。実際、こんなバカバカしいレベルのことになっているのである。
マーケティングの人々は一つの言葉や語句に執着し、そこから意味の最後の痕跡を搾り出すまで乱用する。今や‘コラボレーション’という言葉を読んだり聞いたりする際には、‘ザル’という言葉に置き換えても差し支えはないかもしれない。おそらくザルに対してはこれは酷かもしれない。ザルが何の役に立つかについては、私の頭を絞って考える必要はないのだから。
Martyn Dayは英国ロンドンにあるEDAのMCADとAECマガジンのグループエディタである。http://www.cadserver.co.uk/
DWFに関するAutodeskの計画:Tony Peachへのインタビュー
無料のDWG/DXFビューワーがAutoCAD 2004から外されたことに関する疑問や当惑を解決するために、Autodeskのビューワー戦略担当ディレクターであるTony Peachにインタビューを行った。
Peach氏はDWFを、エンジニアリングオフィスと外部とのデザインデータのコミュニケーションに関するAutodeskのコミットメントとして定義した。それはそれとして、失敗に終わったWorkCenterドキュメント管理ソフトウェアの後継者はどこにいるのか、と私は尋ねた。“BuzzsawとStreamline”というのが同氏からの答えであった。
Autodeskは現在DWFに関して真剣に取り組んでいるが、しばらくの間DWFを“無視していた”とPeach氏は率直に認めていた。DWFはインターネットバブル騒ぎのときに開発されたもので、“Webに対してお前は何をしているのか?”という問い掛けに対する対応であった。DWFは“drawing Web format”の略語で、Webページ上にAutoCAD図面を表示するための単純かつコンパクトなファイルフォーマットであった。単純かつコンパクトであった理由は、当時はインターネットへアクセスする主要手段が遅い電話線を使うものであったからである。
昨年、Autodeskはデザインソフトウェア会社であるという同社のイメージに適合するように、DWFを“design Web format”と改称してDWFの再プロモーションを始めた。DWFの機能は複数図面セットを処理できるように大幅に拡張された。今後のリリースでは、3D、アニメーション、アセンブリ、レッドライニング、見積り、テイクオフ、オブジェクトスナップの追加、デジタル署名、及びAutoCADへのDWFinコマンド追加などが計画されている。短期的には、すべてのAutodesk製品がDWFエクスポート機能を年内に備えることになる。
DWFの3Dバージョンは既にStreamlineで使用されていること、及びVolo ViewのXMLフォーマット化されたRMLレッドラインファイル出力はDWFの変種であることにもPeach氏は言及した。
図面のアーカイブ用途にDWFは適しているのか? ペーパーの図面を保管するのと同様なことを考えているのであれば、答えはイエスである。DWGもアーカイブされる必要があるであろうが、DWFはDWGよりも33〜75%小さいのでアーカイブには適している。
競合相手のAdobeについて私は尋ねてみた。PDFとは違い、DWFパブリッシャーは無料でAutoCADに付いている。CADフレンドリーなAcrobat Pro v6は445ドルする。PDFは座標系が欠けているとも同氏は付け加えた。Acrobat 6 Proリーダーが日の目を見るかはさておき、AdobeにとってはCADは単なる気晴らしにしか過ぎないと私は思う。
DWFのパブリッシングとビューイングは無料であるが、いつまでそれが続くのか私にはいささか疑問である。Autodeskが売上げ増大を必要としていることを前提にすれば、そしてDWGビューワーであるVolo View Expressを有料化したことを思えば、DWF関連での売上げに対するAutodeskの欲望が今後大きくなっていくものと私は思う。
上記のことは、無料のDWG/DXF 2004ビューワーとしてのVolo View Expressが、何故にもはやAutodeskから提供されないのかという疑問に帰着する。理由は二つで、セキュリティとサイズである。AutodeskはDWFを図面の安全なビューイング用として強調しているが故に、DWFビューワーは無料である。サイズに関しては、Volo Viewプログラムはソリッドモデラーからの図面をビューイングする目的でInventorエンジンを使用しているため、AutoCAD自身よりもプログラムサイズが大きくなっている。それ故に無料ではないのである。
無料のDWFビューワーは次のサイトで入手できる。
http://usa.autodesk.com/adsk/servlet/index?siteID=123112&id=823771
(107KB)
なおv5とv6のツールボックスは、ライセンス条項と登録フォームへの記入を行えば次のサイトで入手できる。
http://usa.autodesk.com/adsk/servlet/index?siteID=123112&id=2418019
プレスリリースのサマリー
見落としていた人のためにCAD関連プレスリリースのサマリーを掲載しておきたい。
CIMdataによれば、2002年の世界全体のCAMソフトウェア市場での各サブカテゴリーにおけるトップは、EDS PLM Solutions、IBM/Dassault Systèmes、CNC Software、及びOpen Mind Technologiesであった。間もなく発表されるに違いない各社のプレスリリースで、これらのベンダーは自社をNo.1と呼ぶことができる。http://www.cimdata.com/
STEP Toolsは、STEP(Standard for Exchange of Product)データのビューイング、読み込み、各種処理、認証、及び共有を行うSTEPとEXPRESSプログラミングツールであるST-Developer v10を出荷する。すべての主要なCADベンダーはSTEPデータ変換を組み込んでいるので、150万のCADステーションがこのトランスレータを持つことになると同社は報告している。http://www.steptools.com/
残りは7ヶ月:AutodeskはAutoCAD
2000のユーザがアップグレード価格の特典を失う“死亡日”を2004年1月15日まで延長する。これによって年度末の売上増大を得ることになるだろう。顧客の色々な疑問を解決するためには次のサイトを見ればいい。
http://www.internalmemos.com/memos/memodetails.php?memo_id=1615
Autodeskはレガシープログラムを提供している。AutoCAD
2004の購入時に1年間のソフトウェアサブスクリプションを購入すれば、AutoCAD
2004を30%割引で購入できるというもの。
nPower SoftwareはRhino
2.0用のPower
SolidsとPower
Booleans v1.1をリリースする。
http://www.nPowerSoftware.com/
ALGORとAlibreは連携して、ALGOR Professionalの中で3Dソリッドのパーツやアセンブリを作成できるパラメトリック・フィーチャーベースMCADを提供する。価格は4,950ドル。http://www.ALGOR.com/products
BetterWMFとCompareDWG
2004はAutoCAD
2004用にアップデートされた。
http://www.furix.com/
AutoManager 2003bはAutodeskのInventor
7用にアップデートされた。
http://www.cyco.com/
同じくEdgeCAM
Solid Machinistもアップデートされた。http://www.edgecam.com/
ゴタゴタしているのでちょっと整理しておこう:
5月1日 :RAND
Technologiesは自社のドイツ事務所を売却(今ではINNEO
Solutions GmbHと呼ばれている)。
5月31日:RANDはPro/Eの販売契約短縮(及びその他の問題)に関してPTCに1億ドルの訴訟を起こした。
6月2日 :PTCは
INNEOとPro/E(及び他のソフトウェア)販売の複数年契約にサイン。
TurboCAD内からFloorPlan図面を開けないというTurboCAD
V9の問題を解決するメンテナンスリリース(バグ修正版のこと)が間もなくリリースされる。
http://www.turbocad.com/
セミナーとコンファランス関連の情報
クリックからブリックへ:Digital Technology and its Impact on Architectural Practice with Branko Kolareviが2003年6月17日に開催される。pseletsky@davisbrody.com
バーチャルシステムとマルチメディアに関する第9回国際会議画がカナダのモントリオールで2003年10月15日〜17日に開催される。http://www.vsmm.org/2003
第1回の土地開発コンファランス&エキスポがメリーランド州バルチモアで2004年5月5日〜7日に開催される。editor@LandDevelopmentToday.com
ニュースレター/Webマガジンの動向
印刷媒体での発行マガジンがまた一つペーパー方式を断念した。‘CATIA Solutions Magazine’は1997年に発刊されたが、2003年春季号からPDF方式に変更された。電子メールでの配送は年間35ドル、郵送によるCD配布は75ドルである。
人事関連の情報
ActifyはRandy Ochsを社長兼CEOとして任命。Oochs氏はSales for Covignaの副社長であった。関連ニュースであるが、ActifyはEDSのJTフォーマットのビジュアリゼーションのためにEDSからPLM Visソフトウェアをライセンスする。
AutodeskはJack
Q. Gaoを、Autodesk
Chinaの企業戦略と事業開発担当の副社長、及びAutodesk
Greater China地域のディレクターに任命。Gao氏は以前Microsoft
China Coの社長とゼネラルマネージャーであった。
各国語版:
英語版(オリジナル版)
エディタ:Ralph
Grabowski
http://www.upfrontezine.com/
ポルトガル語版
エディタ:João
Brogueira <formacad@mail.telepac.pt>
http://www.formacad.info/
フランス語版
エディタ:Patrick
Emin <pemin@club-internet.fr>
http://minilien.com/?DPJwH1AeVP
日本語版
エディタ:大串康彦
<yasu@rrcorp.co.jp>
http://www.rrcorp.co.jp/
Entire contents copyright ©2003 by upFront.eZine Publishing, Ltd. All rights reserved worldwide. Article reprint fee: $500. All trademarks belong to their respective holders. "upFront.eZine," "Talking About Issues in CAD," and "On your desktop every Tuesday morning" are trademarks of upFront.eZine Publishing, Ltd. Letters to the editor may be edited for clarity and brevity. Opinions expressed are not necessarily shared by upFront.eZine Publishing, Ltd.